ヒアルロン酸が関節を滑らかに動かす

 ひざ痛のある人は、つい体を動かすのがおっくうになってしまいがちです。しかし、痛いからといって体を動かさずにいると、ひざ痛はますます悪化してしまいます。

実は、ひざ痛を治すには、ひざ関節を動かすことがとても重要。そして、その鍵を握るのがヒアルロン酸です。

ひざ関節全体は関節包という膜で覆われており、その内部は関節液で満たされています。この関節液の主成分がヒアルロン酸と水で、関節を滑らかに動かすための潤滑剤の役目を果たしています。

ヒアルロン酸とは、2種類の糖が交互につながったもので、分子(粒)の大きさが非常に大きいのが特長です。そのため、水の分子を大量に抱え込むことができるのです。ちなみにヒアルロン酸1㌘が抱え込むことのできる水の量は約6㍑。1㍑のペットボトル6本分に相当します。

ヒアルロン酸が十分に含まれている関節液は、とても粘りけがあります。関節液を器にためておき、パチンコ玉を入れると、パチンコ玉がゆっくりと沈んでいくくらい、とろみのある液体なのです。

 関節液は、ひざ軟骨の表面を覆っています。関節液に豊富なヒアルロン酸が含まれていれば、軟骨は滑らかに動きます。これを例えていえば、アイススケートのようなもの。氷とスケート靴とのあいだに水の膜があるためにスイスイ滑れるように、軟骨も水の膜があるから滑らかに動くのです。

ところが、ヒアルロン酸が少なくなると、関節液の粘りけがなくなり、ひざに体重がかかったときに、軟骨の表面を覆っていた水の膜に穴があいて、軟骨どうしが直接こすれ合ってしまいます。これが関節軟骨をすり減らす原因であり、その結果、ひざの痛みや炎症などを引き起こすのです。

 

軽度ならひざの運動だけで治る

 このように、ヒアルロン酸が不足するとひざ痛を起こしやすくなります。そのため、私の外来では、ひざ痛がある程度まで進行してしまい、ひどい痛みを訴える患者さんには、ひざ関節内へヒアルロン酸の注射を行っています。外からひざ関節の潤滑剤を一気にドカッと補うわけです。

 しかし、注射をしても、ヒアルロン酸が関節内に永久にとどまるわけではありません。新陳代謝(古いものと新しいものの入れ替わり)でどんどん消費されていきます。

そこで、ほかの方法でひざ関節のヒアルロン酸を補う必要があります。それがひざの運動です。ひざを動かすことにより、自力で関節のヒアルロン酸を増やすことができるのです。そのしくみを説明しましょう。

 ヒアルロン酸は、ひざの関節包の中にある滑膜というところで必要に応じて作られています。関節を動かさないでいると「必要がないからヒアルロン酸を作るのはもうやめよう」ということになってしまうのです。

 そのため、ひざの痛みがひどい患者さんにはヒアルロン酸の注射を打ちますが、同時に、ひざの運動の重要性を説明して、しっかり実行してもらっています。きちんとひざの運動をした患者さんであれば、5回以内の注射でひざ痛が消えることが多く、10回を超えて注射を続けることはほとんどありません。

 運動によってヒアルロン酸が増加することは多くの研究結果から明らかにされています。

現在ウサギを使った実験の方法がすでに確立されています。全身麻酔をかけた何十匹かのウサギを二つのグループに分け、一つのグループではひざをじっとさせておき、もう一つのグループでは強制的にひざを動かして、5時間後に両グループのひざ関節内のヒアルロン酸の量を調べます。5時間でひざを200回動かしたウサギのひざ関節内のヒアルロン酸は、じっとさせておいたウサギに比べて1.5倍に、また5時間で1万5千回程度動かした場合は2.3倍以に増えていたという結果が出ています。

 私の外来では、ヒアルロン酸の注射とひざの運動で、多くの患者さんのひざ痛が改善しています。軽度のひざ痛であれば、注射はせずにひざの運動だけで治ってしまうこともあります。

さらに閉経後の女性の場合は、骨粗しょう症をほぼ全員が併発しています。骨粗しょう症を放置したままでは、ひざ痛を治すことはできません。そのため、ひざ痛を治すには、骨粗しょう症の治療・ヒアルロン酸注射・運動の3つを行う必要があるのです。

最近、ヒアルロン酸の重要性は、一般の方にも知られるようになってきました。しかしひざの運動をすることの重要性は残念ながらあまり知られておりません。科学的なデータが保証するひざのヒアルロン酸を増やす『唯一の方法』は、現在のところひざの運動だけです。ひざを動かす『回数』がもっとも重要なのです。

 

ひざの運動

運動というと、すぐにウォーキングやスクワットを思い浮かべる人が大半だと思います。しかしそれはまったくの間違いです。両方ともひざに対しては有害です。

まず、歩いてもひざの運動にはなりません。動いているのは股関節です。ひざは伸ばしたままで、ほとんど動きません。つまり、歩くことは全身と股関節の運動にはなりますが、ひざの運動にはならないのです。さらに足を接地するときの衝撃だけがかかるので、実はウォーキングは、ひざにとってはよくありません。

実験結果を思い出して下さい。動物実験では、ひざを動かしているのはウサギではなく、実験をしている人間です。大事なのは膝を動かす回数なのです。筋肉を鍛えることではありません。できるだけ楽に回数を稼げる方法が有利です。実際に今痛みがあるなら、1日に200回ぐらいしないといけません。ですから、筋肉トレーニングを兼ねている運動だと、疲れてしまうので回数を稼ぐためには不利です。スクワットにいたっては軟骨に負担をかけてしまうのでさらによくありません。

ここまで理解してもらえれば、次の運動が非常に効果的なことがわかると思います。

ただ仰向けに寝て踵を床につけたままスライドさせて、ひざを曲げ伸ばしします。太ももの力を抜いて、ひざを大きな範囲で動かします。脚が疲れないように気をつけて、できるだけ回数を稼ぎます。なんとか左右各200回達成して下さい。速効でヒアルロン酸が1.5倍に増えるはずです。片ひざずつしてもよいですし、左右交互にしてもかまいません。できるだけ自分の疲れない方法で回数をのばして下さい(通常、片方ずつしたほうが楽です)。

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