慢性腰痛

 急性腰痛は、ちょっとしたコツで劇的に改善しますが、慢性腰痛を治すには、少し根気が必要です。慢性腰痛を治す…つまり腰に痛みがまったく発生しないという状態を実現するには、上半身の支え方を根本的に改善する必要があるのです。要するに姿勢を良くしないといけないのです。これから説明する姿勢を良くする練習はとても簡単なのですが、習得するのには時間と根気が要ります。気長に頑張りましょう!

 姿勢を良くするとは、背筋ではなく爆笑筋を使って背筋を伸ばすということなのですが、そうすると「爆笑筋をどうやって鍛えればよいのですか?」と質問されることがよくあります。ですが爆笑筋は、全く鍛える必要のないとても強い筋肉です。そもそも筋トレでは腰痛は治りません。筋トレで自転車に乗れるようにならないのと同じことです。「爆笑筋が上半身を支えているのだ」という“感覚”を身につけることが、重要なのです。

まず、爆笑筋の位置を知りましょう。ほとんどの人は、爆笑筋がどこにあるのか、どうやって動かしていいのか、なにをしているのか、わからないと思います。イスに座って両手の人差し指を腰の出っ張りの上に当て、咳払いをしてみてください。ビクンと動いたのが爆笑筋です。とても強い筋肉だということがわかったでしょ。

ではイスに座ったまま、人差し指で爆笑筋に力が入るのを確認しながら、おへその下あたりをへこませてみましょう。これはスムーズにできるまで根気よくしてください。そしてだんだん強く力を入れてみましょう。おへその下がギュッとひっこんで、人さし指の下で爆笑筋がカチンカチンの“大爆笑状態”にできるようになればしめたものです。

次は、『爆笑筋が上半身を支えている』という“感覚”を身につける練習です。とても簡単です。ただ爆笑筋に力を入れてゆっくりイスから立ち上がるだけです。腰を少し丸めてけっしてそらさないことと、頭を膝より前に出さないことに注意して下さい。それだけです。急性腰痛のところで説明した立ち方と同じです。「何回やればよいですか?」とよく聞かれるのですが、おしりがイスから離れていくときに爆笑筋がググッと上半身を押し上げる感覚が身に付くまです。難しければ2段階に分けて練習して下さい。まずは爆笑筋を使っておへその下をグッと押し込むとお尻が少し浮く感じをマスターし、それができるようになったら、そのまま脚に力を入れて床しっかり踏ん張って、できるだけゆっくり立ち上がるようにしてください。1回でわかる人もいれば、何週間もかかる人もいます。妙に思われるかもしれませんが、この練習は急性腰痛がある状態の方が上手くいきます。「正しい動作をすると痛みが劇的に軽くなり、間違えると痛みがはしる」といった多少追いつめられた状態で練習する方が、より正しい動作を本能的に選択しやすくなっているのでしょう。

さて最後は姿勢良く立つ練習です。背筋を伸ばして腰に負担をかけず、美しく立つためには、まず爆笑筋をほどよく緊張させて、しかもおへそより上の腹筋の力を抜かなければいけません。さらにお尻の筋肉を爆笑筋につり合わせて緊張させる必要もあります。バレエダンサーの立ち方と同じですが、意識するところが多すぎてかなり難しいです。 けれど、これを簡単に習得する方法があります。スキップです。スキップをすると、爆笑筋、腹筋、そしておしりの筋肉が、自動的に理想的な状態になります。爆笑筋の位置に手を当て、スキップをしてみましょう。そしてスキップの体勢を保ったままで歩行に移行してください。スムーズにできなければまたスキップからやり直します。できるようになったら歩くのをやめ、体の横に自然におろした手の中指の位置を確認して下さい。中指が体の真横(ズボンなどの縫い目)より前に出ていなければ合格です。これが、いわゆる体に軸ができているという状態で、とても楽に美しく立てているはずです。

こうした動作が身に付けば、自然と腰痛はなくなります。まず、爆笑筋をうまく使えていればそれだけで、腰をひねって痛めてしまうことが減ります。もし痛みが発生しても、爆笑筋の使い方をマスターしていれば背筋の暴走を抑えられるので、ほんのちょっとした痛みにとどめることができます。 爆笑筋を正しく使って、体の軸ができている状態になっているからです。実際に、爆笑筋の使い方をマスターして慢性腰痛を克服した患者さんは、立った状態でのレントゲンで腰椎が後ろへそる角度が10度程度小さくなることを確認しています。ただしレントゲンでの角度測定でも大きく改善するまでには、早い人でも1ヶ月、時間のかかる人だと3ヶ月以上かかります。ですから気長にコツコツ練習を続けて下さい。 

体の軸ができていれば、歩き方も美しくなり疲れにくくなります。スポーツも上達します。さらにいつも爆笑筋を使っていれば、腹腔(おなかの内側)の体積が制限されるので、便や内臓脂肪のたまる余地が少なくなり、便秘やメタボの予防にもなるのではないかと期待しています。