―ギックリ腰を引き起こす錯覚とは?

まず、なぜ腰痛がおこるかを説明する前に、人間が持っている上半身の支え方に対する“錯覚”について説明します。ほとんどすべての人が、腰の筋肉つまり腰部の背筋が上半身を支えていると感じていますが、これは明らかな“錯覚”なのです。かなり意外で、にわかには信じることのできない話だと思いますが、ちょっとこの写真(図1参照)を見てみて下さい。これは、ぼく自身が背すじを伸ばした良い姿勢と、わざと力を抜いて猫背のだらけた姿勢をした時の写真です。一緒に写っている腰椎のレントゲン写真は、そのそれぞれの姿勢で撮影したものです。これはぼくの本(「腰痛を治すのは、医者ではなく、あなたです。」ランダムハウスジャパン)の説明用に作成しました(ちなみに、通常腰椎のレントゲン写真は横向きに寝て撮影するので、このように立っている状態で撮影することもレントゲンで姿勢を評価することも行われていません。)

ちょっと驚いてほしいのですが、右側の猫背の悪い姿勢の時、腰椎は明らかに後ろにそっているでしょ。つまり、こういうことなんです。腰椎は元々後ろにそっているので、上半身の体重がかかるとさらに後ろにそります。もう少し詳しく説明すると、背骨はまっすぐではなくS字形をしていています。そして猫背の時、前に倒れているのは背骨の上側だけで、下側の腰椎は後ろに倒れているんです。

さて上半身の重みが、元々そっている腰椎をさらにそらせるということが理解できたら、次に背筋の働きを考えてみましょう。ご存じのように筋肉は、縮むことで力を発揮します。従って腰部で背筋に力を入れると、元々そっている腰椎をさらにそらせることになります。つまり腰部では、上半身の重みも背筋の力も、両方とも腰椎をそらせる方向に働くのです。図2のようなイメージです。腰の背筋に力を入れれば入れるほど腰椎にはどんどん負担がかかります。というわけで、腰の背筋が上半身をささえていると感じていることは“錯覚”なんです。