ギックリ腰の正体とは?

今まで腰痛の原因は、色々と研究されてきました。椎間板、仙腸関節、椎間関節、加齢による変化、メンタルな問題… などなどですが、全く結論には達しておりません。多分そのすべてが正しいことで、どれもが腰痛の“きっかけ”になるんだと思います。しかし、ぼくが重要だと考えているのは、痛みの最初の“きっかけ”ではなく、どんなささいな痛みでもあっという間に激痛にしてしまう“仕組み”があるということです。

 具体的には、こういうことです。まず腰のどこかに何か小さな痛みが発生したとします。背筋でも腰椎の関節でもどこでもかまいません。日常生活で少し負担がかかることぐらい誰にでもあるでしょ。『なにかの拍子に壁に手をぶつけて、軽い突き指をして数分間痛かった』といった程度のことです。この程度の痛みを、立つこともできないほどの激痛に変えてしまう“仕組み”が腰には潜んでいるのです。順番に説明していきます。

通常、ねんざをして関節に痛みが発生すると、関節の周辺にある筋肉はグッと収縮してねんざした関節を動かないようにガード(防御)します。この働きを「防御収縮」といいます。これがうまく関節を“防御”できるのは、関節には通常、関節を曲げる筋肉(屈筋)と関節を伸ばす筋肉(伸筋)のペアがバランスよくついているからです(図3)。この屈筋と伸筋が同時に収縮すると、関節を曲げる働きと伸ばす働きが釣り合って関節が動かなくなります。つまり、ねんざした関節に添え木を当てたみたいに固定することができるのです。

ところが腰椎の背中側には、腰椎と同じぐらい太い背筋が2本もついているのに、おなか側には筋肉は付いていません。つまり腰椎には、後ろにそらす背筋だけが備わっていて前に曲げる筋肉がなにも付いていないのです(ちなみに上半身を前に曲げる筋肉は腹直筋、いわゆる腹筋なのですが、この筋肉は肋骨のみぞおちの部分と骨盤の恥骨との間を結ぶ筋肉です。したがって腰椎とは内臓を隔てて遠く離れています)。腰に痛みが発生しても、突き指などと同じように防御収縮が起こります。腰をねんざしたとたん、背筋が腰を守ろうとします。ところが、背筋には反対の働きをするペアがいないので、背筋だけがググッと収縮して腰椎はどんどんそりかえって締め上げられ、痛みがどんどん強くなっていきます。ここからさらに深みにはまることになります。最初に説明したように、人には背筋が上半身を支えているという“錯覚”があるため、腰に痛みが発生すると背筋に力を入れて必死に“かばおう”としてしまいます。ところが、背筋に力をいれて“かばおう”としても腰椎をさらにそらせるだけです。実はこれが一番してはいけないことで、痛みを発生している腰椎をさらにそらせて締め上げて、ますます痛みを強くします。

これはいわゆる『悪循環』です。この悪循環のために、単なるねんざがあっという間に激しい痛みとなり、場合によっては立てなくなってしまいます。これが『ギックリ腰の正体』です。