どうすれば腰痛が消えるか?

痛みを止めるには、背筋の力を抜かなければいけません。痛みのために無意識に力が入っているので、これをやめることは難しいですが、簡単な方法で背筋の力を抜くことができます。

この方法を説明する前に関節の運動の仕組みを理解してください。そんなに難しいことはありません。関節を曲げ伸ばしするとき、その関節についている屈筋と伸筋(図3)は、ケンカをしません。例えば、伸筋を使ってひじを伸ばそうとすれば、ひじを曲げる屈筋は自動的に脱力します。このように、互いに邪魔をしないように反対の動作をする筋肉のペアを「拮抗筋」と呼び、それをコントロールする神経のしくみを「相反神経支配」といいます。この「相反神経支配」の働きを利用して、つまり背筋の拮抗筋に力を入れて緊張しきっている背筋を脱力させようというわけです。それでは、背筋と拮抗筋の関係にあり、腰を支えてくれる筋肉は存在するのでしょうか? 実はちゃんとあるのです。ヒントは図1の姿勢の写真です。 

猫背の状態(右側)から背すじを伸ばす(左側)ために使った筋肉が答えです。背筋を使ってもだめなことは、もうわかっていますよね。実は左側の写真の時、ぼくはへその下あたりのおなかをへこませて前から腰椎を押しかえしているのです。このへその下あたりをへこませる筋肉は、脇腹にある外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の3枚セットなのです(図4)。この筋肉は普段、あまり意識して動かすことはありませんが、私たちはおなかをへこませる時、例えば、せき・くしゃみや排便時にこの筋肉を使っています。ためしに図4のように人差し指で骨盤の上を触りながら咳払いをすると、一番外側の外腹斜筋にビクンと力が入ることがわかります。また爆笑するとよくわき腹が痛くなりますが、そのとき痛くなる筋肉がこれらの筋肉です。そこでぼくは勝手にこれらをひとまとめにして「爆笑筋」と呼んでいます。図1をもう一度見てみて下さい。爆笑筋が左右同時に動くと、おなかの壁が腰椎を前から後ろへ押しかえして腰椎のそりが少なくなり、左側の写真のように背筋が伸びて腰の負担が少なくなるのです。また胸も上に押し上げられて姿勢もよくなります。逆に爆笑筋に力が入っていないと、腰椎は後ろに倒れそりが大きくなって、胸は下がり首が前に出て右側の猫背の姿勢になります。

さて「相反神経支配」に話をもどします。腰の動きを考えてみましょう。腰は、腹筋を使った前屈と背筋を使った後屈の単純な動きをしているようにみなさんは感じていると思いますが、実際はもう少し複雑なのです。単純な前後屈以外に、爆笑筋によって腰椎のそりを小さくするという動作があるのです。そして腰椎のそりを大きくする作用をもつ背筋と、腰椎のそりを小さくする作用を持つ爆笑筋が拮抗筋の関係にあるのです。ちなみに前屈の作用を持つ腹筋は背筋の拮抗筋でないことは、腰痛のあるときに、腹筋を縮めて体を前屈させようとしても、痛くて前にかがめないことから明らかです。

最近、ぼく自身の爆笑筋と背筋に電極を付けて筋電図を調べたところ、爆笑筋に力が入ると背筋が脱力し、爆笑筋を脱力させると背筋に力が入るということが確認できました。図1の左側の良い姿勢では背筋が脱力し、右側の猫背の姿勢では背筋に勝手に力が入ってしまっているのです。爆笑筋に力が入ると、腰椎のそりが少なくなり、背筋も脱力して自然に姿勢がよくなります。このように、爆笑筋を上手に使うことこそ、腰痛から抜け出す最大のポイントなのです。では具体的に腰痛のやっつけ方を解説しましょう。急性腰痛と慢性腰痛に分けて説明していきます。