では背筋とはいったい何のために発達してきたのですか?

人類の直立二足歩行は450万年前に始まったとされていますが、私たちの骨格は四足歩行のときからさほど変わっていません。今でも腰椎をふくめ筋肉や骨格の構造はサルのままなのです。基本的にほ乳類の筋骨格はほとんどみんな同じです。ですから我々人間の体の構造は、四足歩行に適しているが二足歩行には適していないと考えるとつじつまがあいます。四足歩行のとき、背骨を構成する椎骨は横並びにつながっている状態です。このとき背筋は、ちょうど吊り橋をつなぎ留めるワイヤーのような働きをして、腰椎が落下するのを防ぎます。四足歩行の場合、腰椎はお腹の内臓の重みのためにお腹側にひっぱられます。このため、横につながっている腰椎の関節には引き離される方向に力がかかります。そして、これを繋ぎ止めるために背筋は発達したのでしょう。ところが二足歩行になると、縦に積み上がった腰椎の上から上半身の重みがかかり、腰椎の関節には四足歩行の時とは全く逆で、引き離すのではなく押しつける方向に力がかかります。こうなると背筋は重力と共同で腰椎を後ろに反らすだけの筋肉になってしまうわけです。背筋は四足歩行時代の遺跡のようなものだと考えてください。二足歩行する時には皆さんが考えているほど必要なものではありません。

さらに四足歩行の立場から考えてみると、爆笑筋の働きが理解できます。四足動物が前屈すれば頭部が地面にめり込むだけなので、前屈は本来不要な動作です。四足動物にとって背筋を脱力させる動作とはお腹をへこませて背中を丸める動作なので、爆笑筋が背筋の拮抗筋となっていて相反神経支配を受けていることが納得できます。

このように考えると、人間の体の構造は二足歩行には不便な構造になっている上に、正しく二足歩行をするための本能も備わっていないのではないかと思います。だから人間だけが、個人個人でこんなにも姿勢や歩く姿が違うのではないでしょうか。人間にとって、正しい姿勢や正しい二足歩行は、おそらく水泳や自転車のように練習の必要なことなのでしょう。